撫子色

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ネイルが乾くのを待っている。

金曜日の夜に、例の彼から「日曜日に渋谷まで出てこないか」と連絡があった。二つ返事で誘いに乗った。「楽しみにしています」という一言を添えて。

男のひとに会うためにネイルを塗ったのは何年ぶりだろう。ここ数年、ネイルはすきなひとのためでなく自分のためにするものだった。福岡にいたころは毎日のようにすきなひとに会っていたから、ネイルをしたり、しなかったりだったけど…そもそも、わたしのすきなひとはそんな末端の変化に気がつくようなひとではなかったからね。笑
昨夜はゆっくりお風呂に入って全身を磨き上げた。指先のキューティクルケアもていねいに。ボディクリームのローズの香りを身に纏ってゆっくり眠り、朝は7時前に目が覚めた。休日なのにとても早起きしてしまったのは、すこし緊張しているせいかな。
今日は、ちょっとだけ背伸びをしている。

「仙台で買ってきたおみやげを渡したい」―それが、わたしからの「また会いたい」のサインだった。彼はとてもスマートに彼が自分から誘う流れに持っていってくれて、なんかもう、彼のそういうやさしさにはほんとうに恐縮してしまう。
二度目はないかもしれない。そう思っていた。あの日のことを後悔こそすれど、いまさらとやかく言う資格などわたしにはないとも思った。「次に誘う日をなるべく早く連絡する」と言われていながら、彼の言うことを信じられないくらいには、自分のことを責めたりもした。

今にも雨が降り出しそうだ。今日着ている淡いグレーのニットワンピースと同じような色の空。文章をあれこれと推敲しているうちに、ネイルもすっかり乾いたみたい。
さぁ、メイクして、おみやげを持って、彼に会いに行くとしましょうか。