白濁

6時40分の飛行機に乗るのに、目が覚めたら6時だった瞬間の衝撃ったらなかった。とんでもない旅の始まりだった。
自宅から羽田空港まで、どうがんばっても1時間はかかる。飛行機は早々に諦め、さらには湯布院に泊まることも諦めようかと思ったけど、とりあえず新幹線で博多に向かうことにした。博多から高速バスに乗り換え、湯布院の宿にたどり着いたのは16時半。宿について早々、温泉に入り両足を投げ出した途端に全身の疲れがほぐれていくのがわかった。
18時。山の幸が贅沢にテーブルの上に並ぶ。よく見ればスーパーで簡単に手に入る食材ばかりなのに、どうしてこうも味が違うのか。野菜の甘味、歯ごたえ、やわらかさ。山菜なんて普段は好んで食べないくせに、すべてぺろっと平らげた。虹鱒は絶妙な塩加減で、豊後牛の焼肉も驚きのおいしさ。すべてがひとつの無駄もなく丁寧に料理されていて、わたしも料理をするうえで日ごろから心掛けたいと思った。
食後、ひと休みしてから再び温泉へ。温泉はふたつあり、空いていれば自由に入っていいというシステムで、他人に気兼ねすることなく部屋ごとで貸し切り湯を楽しめる。白濁のお湯は日によってブルーに変化することもあるんだとか。さらっとしているのに、肌を滑ると非常になめらかで、これぞまさに美肌の湯という感じ。1時間ほどゆっくり浸かって部屋に戻った。身体はいつまでもぽかぽかと温かかった。

翌日は雨だった。こんなどしゃ降りの旅行は、昨年宮崎に行ったとき以来だ。

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金鱗湖まで歩いてみたけど、あまりの雨の強さに早々に退散。シャガールの美術館に逃げ込んだり、湯の坪街道のおしゃれなカフェでランチを食べながら雨が落ち着くのを待った。
雨が弱まったタイミングで外に出て、歩きはじめると運よく雨が上がった。時間はたっぷりあったから、観光マップを確認し、びしょ濡れになった折り畳み傘を丁寧に閉じて、思い切ってステンドグラス美術館に歩いていくことにした。館内は残念ながら写真撮影不可。色とりどりのガラスで描かれた作品は、特に自然光に透けて見える教会のものがすばらしく美しかった。
それから宇奈岐日女神社に向かった。稲刈りの済んだ田んぼの横道を、雲に霞んだ山を見晴るかしながらのんびり歩く。由布院駅前や湯の坪街道、金鱗湖周辺の喧騒と打って変わって、神社らしい荘厳で物静かな雰囲気が心地よく感じる。中韓の観光客はこういう場所にはさしたる興味もないのだろう。わたしはこっちの方がよっぽど日本らしくて素敵だと思うんだけど。

飛行機に乗り遅れたことも、新幹線代で余計にお金がかかったことも、ゆふいんの森号に乗れなかったことも、晴れの湯布院を楽しめなかったことも、ぜんぶどうでもよくなるくらいには楽しかったし、満足した。
15時45分。高速バスは湯布院を後にして、一路福岡へ向かった。