鈍色

「ふたりは結婚してこっちに戻ってくるものだと思ってました」
「こっちじゃけっこうウワサになっていたんですよ、ふたりのこと」

昨日、会社のひとたちと東京湾に浮かぶ某無人島でBBQをして、久しぶりに会った会社の後輩に言われた。あれから半年が経って、わたし自身、すきなひととのことは「もう忘れた、過去の話だ」と思っていたけど、ぜんぜんそんなことなかったみたい。
後輩の言葉を素直に受け取れば、わたしたちは傍目にも恋人にごく近いような関係に見えていたということでしょう?結果的には木っ端微塵に玉砕しちゃったわけだけど、わたしだって、なんだかんだ言いながらも2割5分くらいは可能性があると思ってた。
みんなの想像どおりになればよかった。なってほしかった。それは紛れもなく、誰にも言えないわたしの本音だ。

「ちょっと波打ち際をふたりで歩いてきてよ」と、被写体になってほしいと頼まれ、先ほどの後輩と並んで砂浜を歩いた。「袖をつまんで、恋人同士みたいにして!」というよくわからない要求に応じる後輩とわたし。
鈍色の海の色こそ違えど、こんなふうにすきなひとの袖をつまんで歩いたことがあったなぁ、とぼんやり考えていた。角島大橋。風が強く吹いていた日。波の音に耳を澄ませながら、潮の匂いにかすかに彼の香水が鼻を掠めたことを思い出す。もう二度と戻らない過去にがんじがらめになって、わたしはいつまでも後ろばかり向いている。せつない、くるしい、いとおしい。そんな感情があふれ出して止まらなくなりそうで怖かった。

昨日の夜、NHKaikoが歌ってた。昨日のそういう経緯もあって、とても久々にすきなひととのことを思い出したわたしは、『未来を拾いに』を聴きながら不覚にもぽろぽろ泣いてしまい、こぼれる涙を拭うこともできなかった。福岡でのaikoのLIVEで聴いたときも思ったけれど、aikoらしいキャッチーなメロディーと前向きな歌詞がとてもすてきな歌だと思う。

10月末にすきなひとと福岡で再会することになった。ふたりきりじゃないけど、それでも、久しぶりに彼に会えると思うとどうしようもなくうれしい。
笑おう。笑って「久しぶり!」と手を振ろう。涙に明け暮れる毎日を捨てて、忘れて、たったひとつ、すきなひとの笑顔に会いに行こう。

そう、未来はきっと、今よりもっと明るい。