くれない

夏休み2日目。台風の接近により横浜への帰りを1日早めたから、今日はひとり横浜で過ごした。
ふと思い立ち、映画館で『君の名は。』を観た。平日の午前中にもかかわらず、映画館の一番大きなスクリーンは8割方の人の入り。高校生から大学生の若い人が多かったように思う。
結論から言えば、文句なしに素晴らしい作品だった。ストーリーの面白さはもちろん、アートワークの美しさにただうっとりしながら、スクリーンに映し出されたそのビジュアルに目はくぎづけ。RADWIMPSの音楽も物語や映像にとてもよく合っていてよかった。
語彙力が乏しくてこの感動をうまく表現できないことがなんとももどかしい。この映画、難しいけど例えるならば、壮大なオーケストラを五感をフル回転させて楽しむような、そんな感覚とでも言えようか。わたしにしてはめずらしく、これはもう一回映画館で観たい!と、わりと本気で思ってる。

映画を観終わったのは、台風が通り過ぎ、地面のみずたまりがきらきらとまぶしい午後のことだった。彼がとなりにいないことをあらためて実感した。できればすきなひとのとなりで観たかった、と思った。すきなひとはもう観ただろうか。これから観る予定だろうか。それとも、「こんなに流行ったら観る気がしない」と、またあまのじゃくなことを言って観ないつもりだろうか(『永遠の0』がそうだった)。そんなことすら、今となってはもう知る由もない。
いつだったか、去年の真夏の暑い日に、彼がおもむろに撮ったわたしの写真はまだ彼の携帯に残っているのかな…なぜだろう。そんなことをふと思い出して、もう二度と戻らないあの日々のことを愛しく思う。

「今夜眠りに就いたら、わたしもどこかのだれかと身体が入れ違っていればいいのになぁ」なんて思うくらいには、仕事も恋も何もかもがうまくいかなくてやるせない。
開け放した窓から涼しい風が入ってくる。ひとつひとつ、雨が過ぎれば次第に季節は先を行き、わたしの心はいつまでも置き去りのまま。