Emerald blue

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角島大橋にどうしても行ってみたかった。

「高速で運転するのなんて何年ぶりだろう」と言いながら、すきなひとの運転はとても安全で、ていねいだった。急ブレーキを踏むこともなければスピードを出しすぎることもなく、駐車はいつだって完璧に決まって、とてもすてきだった。
あれから一週間が経つよ。どうか、これが最後の楽しい思い出にならないでほしい。

エメラルドブルーの海は沖縄のそれを髣髴とさせるほどで、ここが日本海だなんてにわかには信じられない。うつくしい景色にわたしは夢中でシャッターを切った。風が強く吹いていた。角島灯台は白亜の灯台で、ふもとの砂利道をよろめきながら歩き、わたしはそっと彼の上着の袖をつまんでしばらくそのまま歩いていた。「大丈夫?」と彼がやさしく尋ねるから、わたしは無言でうなずいた。どうしても、彼の手をつないでみることはできなかった。
たくさん笑って、たくさん話をした。いいことも、わるいことも、彼に話したかったし聞いてほしかった。彼もいろんな話をしてくれた。ほんとうに、ほんとうに、泣きたくなるくらい楽しかった。
レンタカーを返却して、天神でごはんを食べて帰った。彼が乗る地下鉄の駅のほうが近いのに、わざわざ「バス停まで送るよ」と言われたけど、「そんなふうにやさしくしないで」と笑顔で断った。一日中運転してきっと疲れただろうから、少しでも早く家に帰って休んでほしかった…というのは口実かもしれない。

「会社のひとを恋愛対象として見たことはない」と先日もはっきり言われたばかりで、もう、これは完全に負け戦だとわかってしまった。
それでもいいの。「すき」って言うの。そして笑顔で手を振ろう。
ありがとう。ごめんね。すきだよ。またね。さよなら。さよなら。さよなら。

わたし、この気持ち、一生忘れないと思う。