群青色

先日のことを彼に直接聞くことができたのは、今週の一番の収穫だったかもしれない。はがゆくて、もどかしくて、くるしくて、どうにかなりそうな気持ちをどうにかしたかった。ただ、それだけだった。彼はちゃんと答えてくれた。やましいことはなくて、隠すほどのことでもなくて、わたしが心配しているようなこともなかったみたい。詳しいことは聞かなかったけれど、わたしはもう、それがわかっただけで十分だ。

ここにきて、わたしには福岡を離れる可能性が出てきてしまった。昨日の夕方、彼と会社ですれ違ったときに彼に呼び止められて、こっそり教えてくれた。部長から得た情報だろうし、その確度はかなり高いはず。自分の上司の行動や言動、周囲のうわさ話などから総合的に判断しても、あと一年は福岡で彼といっしょにいられると思い込んでいたから、彼から耳にした話はまさに青天の霹靂。わたしはそれから一切の仕事が手につかなくなってしまった。
彼を見送る立場がいいのか、彼に見送られる立場がいいのか、考えている。考えているんだけど、どっちも嫌だと思う。彼と離れたくないと思う。とは言え、会社が決めたことには従わなくちゃいけない。ホレたハレたのわがままで、そんなものが覆せるわけないんだから。
「あなたが煮え切らないうちに、わたし、天草に行きそびれちゃったじゃない」と彼を責めてみたら、「来週、ほんとうの結果がわかったら、それからどうするか考えよう」と言ってくれた。どうするもこうするも、今からじゃたぶんどうしようもないんだけど、いっしょに天草に行くこと、晴れた軍艦島をリベンジすること、下関でふぐを食べること、彼と交わした約束のいくつかは果たされないままで、でも、彼はちゃんと覚えていてくれた。そして、わたしはこんなにも待ち焦がれていた。

彼と離れることになったら、わたしはちゃんと彼に気持ちを伝えようと心に決めていた。「すき」って言うの。逃げないで言うの。

あぁ、でも、ごめんなさい。泣きそうだ。
そばにいたいよ。距離がどんなに離れてもいいから、心だけは彼の近くにいたいんだ。いっしょにおいしいものを食べて、いっしょにうつくしいものを見て、感動して、泣いて、笑って、楽しんで、そんなふうに彼のとなりで生きてみたい。彼とうまくいくことよりも彼にふられることしか考えられなくて、もしそうなったら、もうふたりでごはん食べたり、遊びに行ったり、LIVEに出かけたり、映画を観たり、飲みに行ったり、くだらない話で大笑いしたり、そういうこともできなくなるかもしれないな、って、考えたら怖くて怖くてたまらない。

残業せずに会社を出ると、まだ空は明るくて、いつの間にか日が長くなっていたことに気がついた。頬を撫でる春の風に別れの季節を感じると、もうどうしようもなく切なくなる。彼のことも、福岡の街も、ここでの暮らしも、手離したくない。離れたくない。
ほんとうに、踏んだり蹴ったりの一週間だった。