藍色

昨日は久しぶりに休日出勤した。誰もいない会社は静かだった。土曜日まで仕事に出てはたして仕事が片付いたのかと言われると首を傾げてしまうけど、数日出張で留守にしていたこと、今週半ばから遅い夏休みを取ることを考えたら、休日出勤も致し方ない。もちろん上司には内緒の休日出勤だ。与えられた業務を時間内にこなせないわたしが悪いのだから、余計な心配をかけたくない。
仕事を終えて、美術館に寄って帰るつもりだったけど、雨が降り出しそうでやめた。

美術館には今日行ってきた。福岡市美術館では「肉筆浮世絵の世界」という展覧会を開催中。いわゆる「版画」じゃなく、紙や絹に直接描かれた浮世絵が一同に会し、それはそれは見ごたえのある展覧会だった。着物から透けて見える肌の感じ、萩の花の細やかな筆致、着物の色柄に流れるような皺、氷に浮かんだ紅葉の儚さ、精緻な筆遣いに表れる躍動感。数百年も前に描かれた絵がこうして今に伝えられて、今に生きるひとの目をも楽しませることの奇跡を思った。春画コーナーも覗いてみた。こういう絵が公の場所で日の目を見るっていうのもちょっと不思議だけど、思いのほかユーモアに溢れていておもしろかった。(東京では春画だけを集めた展覧会があるそうで…行ってみたいような、そうでもないような。)
福岡市美術館では、12月からモネの展覧会が始まるらしい。印象派の絵画は好きなので、こちらもぜひ行こうと考えている。

というわけで、福岡にやってきて一年半。恥ずかしながらわたしは今日初めて大濠公園の池を見た。ぽつりぽつりと雨が降る中、傘も差さずに池のほとりを歩いていた。晴れた日にベンチに座ってコーヒーでも飲みながら読書したり、絵を描いたり、物想いに耽ったり…これからそんなふうに外で過ごすのが気持ちいい季節になるね。
泣いたりしないよ。元気だよ。“いつもどおり”を上手に演じよう。それが普通になるように、気づけば忘れていられるように、思い出さなくなるように。