赤紫

気づいたら6月が終わろうとしている。
先日、幸か不幸か今年度の昇級を果たしたわたしは、横浜にある本社で新任研修を受けてきた。せっかく東京へ行くのなら、と、東北新幹線に乗って仙台へも行った。「仙台なんて横浜出張のついでで行くほど近くはないだろう」といろいろなひとにつっこまれたけど、東京から一時間半もあれば着くんだもん。半年ぶりに食べた母親の手料理はとてもおいしかった。
その道中、ふらりと立ち寄った本屋さんで一冊の文庫本を手に取った。5月に新刊として発売されたばかりの、『路』(作:吉田修一)という本だ。某大手企業による台湾新幹線建設に係る受注からその完成までを時間軸に据え、それを取り巻くひとたちの様々な物語だった。これまで読んだ吉田修一氏の本にはあまりハズレがなく、この本も文句なしにおもしろかったので、わたしは文字どおり寝る間も惜しんでページをめくり続けていた。
福岡に来てからというものの、読書量は格段に減ってしまった。一番の理由は通勤時間が短くなり、さらにその手段が自転車になったことだと思う。東京で暮らしていたときは、満員電車のストレスから逃れるようにしていつも本を読んでいた。どんなに長く辛い通勤時間だって、本の世界にのめり込むことができる時間だと思えばなんてことなかった。とても久しぶりに本を読んで、読書の楽しさをあらためて実感した。今勉強している資格の試験が終わったら、また少しずつ好きな本を増やしていきたい。

今日は一日雨だった。わたしは雨の音を聞きながら、ただひたすらに『聖の青春』を読み返していた。ちなみにこの一冊、初読は約2年前…らしい。

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開け放した窓から聞こえる雨の音は、わたしの嗚咽をかき消しながらアスファルトに染み込んでいくようだった。
ここ数日は勉強する気も起きず、テキストは閉じたままだ。たまにはそれもいいんじゃないかなぁ、なんて甘えたことを考えている。19時の空が赤紫に染まった。とても短い時間だったけど、美しい夕焼けだった。きっと明日は天気になる、と、そう確信したわたしはすきなひとに連絡を取り、明日はふたりで出かけることにした。

「会いたい」と言えば何も言わずに会ってくれる彼に、わたしはそれ以上何も求めることはできないけれど、「ありがとう」の気持ちだけは忘れずにいようと思う。両極に揺れる気持ちを持て余し悲観的になることも少なくないからこそ、「今が楽しければそれでいい」って、そんなふうにシンプルに考えながら生きていきたいなぁ…とぼんやり思う雨上がりの夜。
薄雲に見え隠れする月の光は今日もやさしく世界を照らす。