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「金曜日、すっごくつまらなそうだったね」と彼にズバリと指摘されて、わたしはひとりでめちゃくちゃ反省した。「ずっと携帯さわってるんだもん、あの子を呼んだの失敗だったかなって思ったよ」なんて言われたときにはもうほんとうに穴があったら入りたかった。「携帯をさわっていたのは友達とのLINEが途切れなかったから」というのが理由で、別に嘘なんか吐いちゃいないんだけどそんなの言い訳にしか聞こえないよね。「そんなことないよ」と言いながら上手く話をそらしたわたしはとてもずるくていやらしい。
やだ、もう。彼にはぜんぶお見通しだし、わたしの態度はわかりやすすぎた。
「だってふたりがよかったんだもん」と、そう言えばよかった?言えないでしょう。たった一時間のお昼休みに冷たいおうどんをすすりながらそんな際どいこと言ったら、それこそ彼を困らせるだけだし、わたしは午後の仕事に身が入らなくなることも目に見えている。彼のとなりに座ってその場をうまくやりすごすことしかできなくて、でも、こころの中ではほんとうに後悔していた。

金曜日のあの日のこと。つまらない、と心の底から思っていたわけじゃない。彼が後輩を連れてきたことはそれなりにショックだったけど、二人でも三人でもわたしは彼がいるから楽しいと思ってた。一週間の仕事が終わってすこし眠かったのもある。「明日晴れたら布団を干そう」とか、「家に帰って早くミスチルの新しいアルバムを聴きたい!」とか、そんなことをぼんやり考えたりもしていた。
言ってみればそれだけだ。“それだけ”なんだけど、こころの奥のほうに閉じ込めて蓋を閉めていたはずの気持ちを彼はすべて見透かしていた。そして、わたしはきっと、その蓋の隙間からどす黒い本心を気づかぬうちに垂れ流していたんだろうなと思う。

彼はそんなわたしを責め立てるでもなく、ただイタズラな笑みを浮かべてとんかつ定食をおいしそうにほおばっていた。久しぶりに彼とふたりでお昼ごはんを食べたのは、水曜日のことだった。