Orange

最近はパソコンを立ち上げるのも億劫になり、家に帰ったらご飯を食べて、テレビに飽きたら勉強(そしてときどきそのまま居眠り)…という生活が続いている。ほぼ毎日キッチンに立ち、食事の支度のついでにお昼のお弁当を作っていることや、毎日ほんの5分でもテキストを開きペンを握って勉強していることを考えると、怠惰に暮らしているようで実はそうでもないのかもしれない。
ただ、そういう生活を続けることに、“キラキラ女子”になりたいとか“デキる女”になりたいとか“女子力アップ”のためとか、そんな高尚な目的など皆無である。すべては自分のやり場のない気持ちをごまかすためであることはどうしても否めない。とはいえ、結局こうしてライフスタイルがより良い方向に変化するなら、そこにある理由はなんだって構わないとわたしは思う。

昨夜は飲み会だった。ここのところ、すきなひとと仕事以外で話すことはなかったけれど、昨夜の飲み会には彼も来ていたから久しぶりにごく普通の話をした。
落ち着いた声、酔いが回った赤い頬、重たそうな一重まぶた、笑うと下がる目尻、いつものフレグランスのラストノート、そして何より、ちゃんとわたしにやさしいところ。
やっぱりすきだと思うんだ。思ってしまうんだ。忘れたくても忘れられないし、嫌いになりたくても嫌いになれなくて、離れたくても離れられない。昨日飲み会の席で彼にも言ったけど、「なんだかんだ言って、わたしのことを一番わかってくれているのはあなただと思う」から、ときどきそうやってわたしを守ってくれるの、どうしても勘違いしそうになるんだよ。

「猫なんか飼ってませんから大丈夫」とムキになって言い張る彼に、「あなたが猫を飼っていてもなんとも思わないわ」と精一杯の嘘をついたわたし。帰り道、すこしだけ後悔した。どうして素直になれないんだろうと思った。雨上がりの夜空にはオレンジ色の満月。火照った身体を冷ますように風が袖を通り抜けて、ふいに彼に触れたときのあたたかさを思い出した。
「あなたが猫を飼っていても、あなたにすきなひとがいたとしても、わたしはあなたのことがすきだよ」と、いつかちゃんと言える日が来るといいな。