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今朝、懐かしいひとからLINEが届いた。
「久しぶり。あなたの元気がないとか、つまらなそうにしているとか聞いたら心配になっちゃって…」
相変わらずとてもやさしいひとだと思った。入社当時からお世話になっている女性。聡明で、明るくて、美しくて、わたしのあこがれのひと。だいすきなひと。
わたしの元気がない、ということは彼から聞いたという。金曜日に彼女に会うことは彼からも聞いていた。彼はいったい何を吹聴したのやら、と思いながら、「わたしよりも彼のほうが楽しくなさそうです」と返事をしておいた。だってそれはほんとうのこと。

わたしのすきなひとはきっと彼女のことがすきで、それは誰の目にも明らかで、社内でそう噂されていることも、たびたびふたりきりで出かけていることも、彼女といっしょにいるときの彼のうれしそうな顔も、わたしはぜんぶ知っているからどうしようもないと思う。何も知らないフリをして、彼といっしょに福岡で過ごす間くらい、何も言わずにただ傍にいさせてほしかった。ただ、それだけだった。
でも、わたしは彼のことも彼女のこともとてもだいすきなの。だから、こんな痛い、切ない気持ちになるのはわたしだけでいいと思ってる。彼にも、彼女にも、どんなかたちであれしあわせでいてほしいと、そう願う心に偽りなどない。
彼女から久しぶりに届いたあたたかいメッセージをとおして、わたしはどうしても彼のことを考えずにはいられなかった。「どうしてふたりともわたしのだいすきなひとたちなのかなぁ」なんてどうしようもないことを考えながら、こぼれた涙を拭うこともせず、わたしはしばらく泣いていた。

ふと気がつくと、すこしだけ開けた窓からやわらかな風が通り抜けて、濡れた頬をそっと撫でてくれた。ベランダの向こうには青い空が見えた。雨上がりの透きとおった空はどこまでも青く澄みわたり、さっきまでの曇り空が嘘のようだった。
なんだか泣いてばかりの連休だった。