潤色

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振り払われた手とかわされた言葉でわたしはすべてを悟った。想いを告げることすら許されなかった。苦笑いするしかない自分が情けなくて、何度目かの「もうやめよう」を、わたしははっきり決意した。泣いてない。泣きたくない。そっと引き下がるには今がちょうどいいことを、わたしは誰よりも知っている。
行こうと思えばひとりでどこへだって行けるの。別に彼といっしょじゃなきゃいけない理由なんてないの。これまでに積み重ねたちいさな約束だって、忘れたふりして笑いながら全部を反故にしたい。揺れる感情をきれいに整理するためには、酷い男だと嫌うよりも、酷い女だと嫌われるほうがずっと簡単だ。そうやって最後まで卑怯なわたしを嘲笑って、馬鹿にして、大嫌いだと蔑んで、わたしがもう二度と立ち上がれないほどに罵ってくれたらいい。

ふたりで見たイルミネーションはとてもきれいだった。足元が濡れるほどの雨が降っていたことも、指先の感覚がなくなるほどに寒かったことも、「見れてよかった」とつぶやいたあのひとの声も、いろとりどりにきらめく無数の輝きも、きっと、ずっと、忘れないと思う。