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昨夜の帰り道、ほろ酔い気分で感じたのは胸を締めつけられるような痛み、それに相反するように誰かを想うことの甘やかな幸福と、言葉に尽くせないほどの感謝の気持ちだった。複雑に絡まったこの泣きたくなるような感情を、わたしはいつまでも忘れたくないと思った。

昨夜は急遽すきなひとといっしょにとある飲み会に参加することになって、ふたりで遅れてお店へと向かった。40歳代のおじさまに紅一点囲まれ、そんな状況は入社当時からよくあることで場慣れしているはずだったのに、昨日は初めて一緒にお酒を飲むひとが多かったからか、わたしは久しぶりに極度の人見知り状態に陥った。見かねた彼が何度も助けてくれて、そのたびに救われる思いがした。(とは言え、飲み会自体は好きだし、昨日もとても楽しかったのだけど。)
時計の針が23時ちょうどを指したころに会はお開きとなった。「みんなで〆のラーメンを食べよう!」という流れを「僕たちはこのまま帰ります」とぶった切った彼にわたしはついて行くより他なく(正直に言うとわたしもラーメンを食べたかった)、彼とわたしはそれぞれに帰宅するべく天神方面へと歩いた。見上げた夜空はまるで漆黒のビロウドのようで、淡く儚げな満月が頭上にぽっかりと浮かんでいた。

昭和通りに突き当たったところで彼とさよならをした。
その瞬間の彼の笑顔がたまらなく素敵だったから、わたしはとても苦しかったんだ。