薄香

花火大会のとき、「『るろ剣』なんて観に行きますか?」とすきなひとに言われて、「数年前の一作目を見逃したから観に行くかどうか迷ってる」と正直に話すと、彼はDVDを貸してくれた。
週末、家でひとりでDVDを観た。『るろうに剣心』、タイトルは知っていたけど漫画すら読んだことがなく、数年前の映画は佐藤健の殺陣がかっこいいと周囲で評判だったから「観てみたい」と思っていただけのこと。とは言え、漫画を知らないわたしでもかなり楽しめて、殺陣は評判どおりの迫力があり、佐藤健のキレッキレの動きにほれぼれとするばかり。これはぜひ映画館で新作も観てみたいと素直に思った。

今日、彼にDVDを返した。(先日行った長崎のおみやげもこっそり入れておいた。)返すついでに、「『京都大火編』はもう観ましたか?」と聞いてみたら、「観ましたよ、なかなかおもしろかった」と教えてくれた。「わたしも今週末に観に行ってきます」と話すと、「じゃあ、9月公開の『伝説の最期編』はいっしょに観に行きましょう」と、彼は笑顔でそう言った。

その笑顔がすきだから、もう、どうしようもないんだな。

今朝、会社の通用口の扉を開けると、うしろから誰かの手が伸びてきたのがわかった。「おはようございます」と声をかけられ、振り向いたら彼がいた。彼は、「君を見つけたけど追いつけなかった」と言って息を切らしていたから、わたしを追いかけていつもの道を小走りでやってきたのだろうと思った。なんだかにやにやしちゃった。
毎日雨が続いて憂鬱だとか、後輩にイライラするとか、朝からふたりでだるいお話。それでも、彼といっしょに笑うと心がいつもより軽やかになる。

彼に聞きたいことも、彼に話したいことも、わたしはいつだって両手にたくさん抱えてる。だから、「今日はお昼ごはんに誘ってみよう」とか「今夜はいっしょに飲みに行きたい」とか、気楽な気持ちで彼を誘うことができることは何よりのしあわせ。そして、すきなひとの笑顔のそばでいっしょに笑っていられることは何よりのぜいたく。
いつだって、彼への感謝の気持ちだけは忘れたくないと思う。