金糸雀色

2年前、北海道に行ったときの写真。天都山から網走湖と能取湖を望む。

今日は久しぶりに外出先から直帰。いつも作るより少しだけ丁寧にポテトサラダを作って食べた。くだらないテレビを観ながら爪を整えてネイルを塗りなおす。こっくりとした深いベージュは早すぎる秋を思わせる。明日はあの子といっしょに参加しているプロジェクトの打ち合わせ。「あの子に会うためにネイルをきれいにしたわけじゃない」と言っても嘘になるかな。

『思い出のマーニー』のこと。わたしの大好きな北海道が舞台。ジブリが描く北海道はいったいどんな景色だろうとわくわくしているところに映画が始まった。作りこまれた絵からわたしの知ってる北海道の風が、においが、あたたかさがふわふわと蘇り、持っていた映画の半券がしわくちゃになるほどに、わたしはこの手を強く握りしめながら望郷の念に駆られていた。
この物語がどうやってクライマックスを迎えるのか、中盤を過ぎてもさっぱりわからなくて不安だった。散りばめられた伏線にも最後までまったく気がつかずにいた(それはわたしが鈍感だからかもしれないが)。でも、最後はすごくきれいにまとまったな、という印象。子どもが子どものままで観るよりも、(子どもの経験がある)オトナたちが観るほうが、なんだか胸にずしんとくる、そんな映画だったように思う。
右頬に伝った涙を拭う仕草が彼に見つからなければいいと思った。もし隣に彼がいなかったらわたしはもうちょっと泣いていたかもしれないと思った。
映画館を出て少ししてから、「いっしょに『風立ちぬ』を観たのは去年の今ごろでしたね」と彼に不意に話しかけられた。「まさか、一年後のジブリの映画を福岡で観るとは思わなかった」という彼の言葉に、わたしは去年のことを鮮明に思い出していた。

わたしだって、なにもかも予想外のことばかりだ。うれしいこともかなしいこともくやしいこともたのしいこともせつないこともくるしいことも、だれかをきらいになることも、だれかをすきになることも。

天神の街を少しぶらぶらして、街角の居酒屋さんに入って、彼とわたしはささやかに乾杯をした。グラスの氷がすこしずつ解けてくような自分の気持ちに嘘はつけないけれど、「あなたがこの街にいっしょにいてくれてほんとうによかった」ということは、いつだってまっすぐに伝えたいと思う。