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週末、自転車を修理した。埼玉にいた2年間、自転車にはまったく乗っていなかった。引越しの際に「こんなポンコツの自転車は捨てていこう」と思ったけど、「福岡で乗るかもしれないんだから持っていきなさい」と母親にたしなめられ、結果的にそれは大正解だった。
ハンドルもサドルもフレームもありとあらゆるパーツが砂埃のようなものにまみれ、もちろんタイヤの空気はすかすかに抜けていて、しかも、車輪には無数のくもの巣が張り巡らされているような自転車。服が汚れないようにと自転車屋さんに持っていくのも一苦労だった。それでも、サビだらけのかごを新調し、後輪のパンク修理で〆て2,200円。おまけに丁寧に洗車までしていただいたようで、目も当てられない有様だったわたしの自転車は見違えるようにきれいになった。

福岡はいわゆる“コンパクトシティ”という街で、自転車さえあればわりとどこへでも行けるのだけど、思った以上に自転車が普及している。
わたしも今日はさっそく自転車通勤を試みた。ところが、朝の忙しい時間帯に悠々と自転車を漕いでいるのはわたしくらいなもので、恐ろしいほどのスピードで横をすり抜けられ、すれ違いざまに衝突しそうにもなり、たった20分程度の距離で何度怖い思いをしたことか…福岡のひとは車の運転が恐ろしく荒いのと同じく、自転車の運転においても思いやりのないひとが多い印象だ。

そんなことを考えながら会社に向かうと、いつもの道で信号待ちをしている彼を見つけた。なんとなく気づかないふりをして、わたしは彼を追い越した。お昼休みに「今朝はさっそうと自転車に乗っていましたね」とメールが届いて、彼もわたしに気づいていたことを知った。

小さな嘘を重ねても、彼はきっと何も知らずに、ただ、わたしだけが苦しい。

梅雨の晴れ間、少し早い夏の匂いが鼻をかすめた。天を仰げば透きとおったみずいろの空の広がる朝。それはまるで、水彩画のようにあわくて、はかなくて、とてもうつくしいひととき。