紅梅色

家を出ると雲ひとつない青空が広がっていた。5月の陽射しは容赦なく照りつけて、わたしは首周りに日焼け止めを塗るのを忘れたことをぼんやりと思い出しながら、地下鉄に乗って待ち合わせ場所へ向かった。

彼は待ち合わせの時間に少し遅れてやってきた。ギンガムチェックのシャツにデニムというシンプルな格好で、それが彼の雰囲気にとてもよく似合っていると思った。彼のとなりを歩きながら、最初は「いまさらどうして?」と自分でも思うほど緊張したけど、一言二言交わすうちにいつもどおりのわたしになった。

電車に乗って太宰府へ行った。思ったよりも混雑していて驚いたのは、彼も同じだったようだ。境内に入り、お参りを済ませておみくじをひいた。わたしは「大吉」、彼は「吉」。おみくじは結ぶことなくお財布に入れて、記念に持ち帰ることにした。
今日の福岡の気温は30℃だったという。あまりの暑さに歩くのも億劫になって、参道で梅ヶ枝餅を買って食べた。甘さ控えめのつぶ餡が焼きたてのお餅にたっぷり包まれていて、とてもおいしかった。
「次はどこへ行こうか」と話しながら歩くも、太宰府太宰府天満宮以外にあまり見所がないことを悟り、カフェギャラリーのようなところでお昼を食べた。ゆっくり過ごして店を出た。太陽は天高く昇り、気温はぐんぐんと上がっているようだったから、わたしたちは歩くことを早々と諦めて天神に戻ることにした。

天神を歩くひとたちもみんな楽しそうだった。「喫茶店でも入りましょうか」と彼が言うから、新天町で見つけたカフェに立ち寄った。おいしいケーキとアイスティーで疲れを癒し、取り留めのない話をした。
「今日はもう疲れたし、明日のお弁当は作りません」と宣言すると、彼は「じゃあ明日いっしょにお昼に行きましょう」と誘ってくれた。「君はいつもお弁当を作っているようだから、誘うタイミングがわからないんです」と話してもくれた。気がつけば福岡の遅い日が暮れて、街は藍色に染まっていた。

カフェを出た帰り際、「お互いにいい息抜きになりましたね」と言う彼は、「また日が合えば、いっしょにどこかへ行きましょう」と言葉を続けた。柳川で川下りをしたいと告げると、彼も乗り気だったからよかった。たくさんの「ありがとう」と少しの名残惜しさをひらひらと振る手に込めて、わたしたちは笑顔でさよならをした。

とても楽しくて、ちょっと切ない、そんな一日だった。