萌黄

空の上から見た奥羽山脈はまだ雪に覆われていたようだった。遠方に佐渡ヶ島を眺め、新潟から能登半島をなぞり、一度海上へ出たと思ったら眼下に隠岐諸島、それから宍道湖を見つけた。快晴の空の旅は正味2時間弱で終わり、わたしは福岡空港へと降り立った。
仙台へ行ったついでに、家族で蔵王までドライブした。蔵王エコーラインはテレビでよく観る「雪の回廊」そのもので、何よりわたしは御釜の神秘的なエメラルドグリーンを楽しみに出かけたのに、湖面は見事に凍結して真っ白。ガイドブックでは見られない、こんな御釜もあるのだなぁ…と新たな発見だった。(写真は携帯で撮った。重たい思いをして一眼レフを福岡から持って行ったのに、蔵王に行く際にすっかり家に置き忘れ、失意の底で撮った写真。)
おいしいものを食べて、好きなものを買って、家族とたくさん笑って、会社の同期にも本当に久しぶりに会って、大好きな定禅寺通りを何度も歩いて、とてもとても充実した連休だった。すきなひとに言われたとおり、連休を仙台で過ごしてよかったと思った。

そういえば、連休中、すきなひとのことは思い出さないことのほうが多かった。でも、明日は久しぶりにお昼ごはんに誘おうと心に決めている。会いたいな、と思う。会って、彼にたくさん話したいことがある。

わたしから彼に話すのは、仕事の愚痴や、埼玉に帰りたいことや、そういう後ろ向きな話ばかりじゃなくて、連休中に楽しかったこととか、九州でこれから行きたいところとか、食べてみたいものとか、なるべくそういう前向きなことがいいと思うようになった。
彼とふたりでただ「帰りたい」と駄々をこねていても何の解決にもならないと気づいた。(ちょっと気づくのが遅かった。)だから、少なくともわたしは、福岡へやってきたことを好機と捉えてできれば彼とふたりでたくさん楽しんでから埼玉へ、東京へ、帰る方法を考えたい。そして、いつかすきなひともそういう気持ちになってくれたらいいと、お節介ながらわたしは密かに願っている。もちろん、そんなこと彼には言えないけれど。

明日から、またすっきりした気持ちで仕事に邁進しよう。