透明

昨年の異動希望調査で、わたしは「東北へ行きたい」と課長に伝えた。力不足だとは思うが震災復興に精一杯尽力したい、と願い出た。東北へ異動希望を出せばほぼ叶うだろう、と聞かされていた。東北は、どこも人手が足りずとんでもない忙しさで、まさに“猫の手も借りたい”ほどの現場だとも。
東北へ行くことになったら、しばらく西日本方面には行きづらくなるだろうと思って、3月の忙しい合間を縫って京都を旅行するつもりでいた。仙台にいる両親にも頻繁に会えるようになるし、東北での仕事に忙殺されても甘えられる場所が身近にあることは、何よりも心強かった。

4月から東北へ行く覚悟だったのだ、わたしは。
でも、現実は違うらしい。

正式な異動先の発表が数日後に迫っている。フタを開けてみないことには、まだ何もわからない。発表直前で異動先がころっと変わることもあるという。でも、わたしは、4月から始まる新生活に胸をときめかせてもいる。職場も住まいもいっぺんに環境が変わるとなれば、それ相応の大変さもあるだろうけど、組織人として仕事をし、仕事をするうえで本意ではない異動を命じられれば黙って従う。それは仕方のないことだ。社会人として、そのへんの分別はわきまえているつもり。

3月になっても真冬のような寒さが続く。それでも、遅咲きの梅が芳しい花を咲かせてくれる。桜のつぼみが日に日に大きくなる。凍てつくような風の冷たさよりもやわらかい陽射しを感じて心がほっとする。
そしてわたしは、この春、どこで桜を愛でるのだろうと考える。

ふと思い返せば、前回京都に行ったのはもう4年も前のことだった。