夏虫色

イマドキの小学生や中学生、高校生は、8月31日を待たずして夏休みが終わるらしい。8月31日の、夏休みが終わってしまう何とも言えない“切なさ”と、新学期が始まることに“ワクワク”する気持ちとの狭間に、小さな胸をときめかせていたことをふと思い出した。
あの頃のわたしは、夏休み最終日になってまで机にかじりついて必死に宿題をこなす、ということはなかった。なかったけれど、宿題にしろ、テスト勉強にしろ、先生に怒られない程度に手を抜いて「しっかりやりました」と見せかけることばかりが上手な子どもだった。中途半端な真面目さから身に付けた力など、オトナになったわたしには何の役にも立たないなぁ、と、今になって思うこと。

そういえば昨日、とても久しぶりにすきなひとに会った。いつ見ても背筋がぴんと伸びていて、彼のその姿勢のよさがとてもすがすがしい。
「仕事なんか、あとで自分が困らない程度に適当にやっておけばいいんですよ」と言いながら、何事も淡々とそつなくこなしてしまう彼は、やっぱり大人だ。遠くから目を細めて眺めているくらいがちょうどいいかもしれない。

明日から9月。社会人のわたしに「新学期」はないけれど、あのころの記憶をなぞって、新しい一ヶ月の始まりに少しだけ“ワクワク”してみようかな。
夏の終わりにぴったりの、きれいな青空が広がっていた。