勿忘草色

東京の空は狭すぎて、ときどき息が苦しくなる。苦しくなって上を向く。息苦しさは変わらなくても、ときどき、あっと息を飲むような景色が広がっていることがある。

「だれかのために」生きることよりも「じぶんのために」生きてゆこうと思った。どうして突然そんなことを思ったのか、自分でもよくわからないけれど、食べたいものを食べて、学びたいことを学んで、行きたいところに行って、会いたいひとに会って、撮りたいものを撮って、言いたいことを言って、欲しいものを手に入れて、なるべく誰かを傷つけることのないように、でも、自分が好きなように生きてゆこうと、そう思った。

まもなく旅に出る。荷造りをはじめる。あの日から、ちらちらと浮かぶ彼の顔が邪魔をする。旅先の天気予報は雨が続いている。こころもからだものんびり、リセットしたい。