真朱

「誰かを好きだと思うことに理由なんか要らなくて、いっしょにいてうれしいとか、楽しいとか、それだけでいいなぁ」と、久々に思うことがあった。
いつもわたしをからかうばかりでめったにほめないひとだから、「絵が上手」と言われたときは素直にうれしかったし、本気で照れた。会社のひとに頼まれて描いたイラストが気づけばたくさんのひとの目に留まっていて、まさか、彼も目にしていたとは思わなかったけど。
やきもちを焼いたり、ふてくされたり、そういうめんどくさいことはなしにして、「ちょっといいな」とか、「ちょっと好きかな」とか、それくらいの小さな恋が今のわたしにはちょうどいい。淡く、儚く、ゆらゆら、ひらひらと落ちてゆくような恋。“恋”とも呼べないほどにおぼろげな、好意のしるし。口には出せない、永遠の片想い。