空色

5月の終わり。
ジムの帰り道、外に出ると雨が降っていた。
傘にぱらぱらと打ちつける雨音が耳に心地よくて、足元が濡れるのも構わずにてくてく歩いた。
暑くなく、寒くもなく、じめじめしているわけでもなく、雨なのに清々しささえ感じる夜だった。

6月の始まり。
今日は会社のひとたちと郊外の公園でゴルフをし、ジンギスカンを食べた。
夕方4時、日はまだ高く、なだらかな傾斜のある芝生にみんなで寝転んだ。
新緑はますます深まり、空はどこまでも広く、青く澄んでいた。

仕事はまぁ、ぼちぼち。
まだ新しい業務に慣れないのと、実は初めて後輩を持ったこともあり、戸惑うことのほうが多い。
それでも焦らず、地道に、こつこつと、ひとつずつていねいに、確実に。
上司だけでなく後輩からも多くのことを教わって、一日も早く、自分らしく仕事を進めたい。

頼れるひとがいること、支えてくれるひとがいることに、心から感謝している。
札幌にいる今だけでなく、これまでもずっとそうだった。
いつでも、どこでも、そういう環境に身を置いていられるわたしは、ほんとうに恵まれている。
だから、その感謝の気持ちだけは、何があっても忘れないでいたいと思う。

札幌に来てから、なんだか今まで以上にいろいろなことを考えている。

red

f:id:irodori-no-sekai:20190521221921j:plain

Mr.Children Dome Tour 2019 “Against All GRAVITY”—―5月20日、東京ドーム。

日曜日の札幌は「一瞬でも離れがたい」と思ってしまうほど朝からいい天気だった。
札幌ドームでのライブ帰りと思しき女性客、東京が目的地の修学旅行生が大半を占める機内で、少し肩身の狭そうなサラリーマン。雑多な人々を乗せ、まさに重力に逆らうように飛行機は飛んだ。

(以下ネタバレあり)

久しぶりのミスチルのライブは、控えめに言っても最高だった。
正直、今まで見てきたミスチルのライブの中で一番よかった、と個人的には思う。

「音楽という船にみんなを乗せて、日々の悲しみや苦しみからできるだけ遠いところへ連れて行きたい」
「嫌なことは全部脱ぎ捨てて、ここに置いて帰ってほしい」
——MCでそう話す桜井さんの言葉どおり、何かの乗り物に乗っているかのような演出で幕が上がった。新旧織り交ぜたセットリストも、まるでジェットコースターのように猛スピードで当時の記憶を次々と蘇らせた。
ミスチルのファン歴18年になるわたしは、当初から一貫して「アルバム『Q』に入っている『ロードムービー』が一番好き」と言い続けてきた。その「ロードムービー」を初めて生で聴けて、しかも、2000年のわたしの誕生日(1月1日)に歌詞ができたこと、桜井さん自身もあえて言うなら「ロードムービー」が一番好きな曲だとMCではっきりと言ってくれて、わたしは天にも昇るほどうれしかった。

“すきだったひと”の隣で聴く「CANDY」もたまらなかった。
桜井さんのやさしい歌声と切ないメロディを胸に刻み込むようにしながら、あの甘くてほろ苦い感情を思い出し、それを受け止めきれずに何度も涙がこぼれた。毎日、来る日も来る日も彼に恋い焦がれて、彼のことをすきですきでたまらなかったときの気持ちは、今までも、これからも、きっと忘れることはない。
わたしは、彼のすこしひねくれたやさしさがすきだった。久しぶりに、ほんとうに久しぶりに彼に会ったけれど、彼のそのやさしさが変わっていなくてうれしかった。あのころと同じような感情で彼のことを「すき」だと思うことはきっともうないけれど、気持ちを伝えてふられたあとも変わらずにいられる関係を、いつまでも大事にしたい。

大きな会場ならではの迫力ある映像、サウンド。前方の視界はちょうどよく開け、近くも遠くもないような場所で大好きな人たちが楽しそうに演奏しているのがとにかくうれしくて、ただひたすら、そのしあわせを噛みしめていた3時間。終わるころには喉が枯れ、足も腰も悲鳴を上げるほど全身全霊を傾けて楽しんだ。
ライブ終演後、水道橋の居酒屋でささやかに宴会をして別れた。またすぐに会えるような、いつでも会えるような、さっぱりとした別れ方がわたしたちらしくてよかった。

あぁ、まさに「最高の月曜日」。明日からまた仕事をがんばらなくちゃ。

lilac

f:id:irodori-no-sekai:20190512220505j:plain

札幌は今日もいい天気だった。

自宅前の道路を東に向くと、このまちのシンボルの一つであるテレビ塔が遠くに見える。そんな場所に住んでいるから、最寄りのスーパーもドラッグストアも少し遠いので困っている。今日はドラッグストアのポイントアップの日で、散歩がてら買い物に行った。
その帰り道、めずらしく母から着信があった。

そう、ここにはまだ書いていなかったかもしれないけど、実は、この春から父も札幌に転勤になり、両親とも仙台を離れ札幌住まいになったのだった。わたしも妹も両親も徒歩10分圏内に家を行き来できるような、まさに「スープの冷めない距離」である。札幌への転勤が重なったこともそうだし、会社が借り上げた自宅がそんな場所にあることも、「こんな偶然ってあるんだなぁ」とまったく驚いてしまう。
母は昼過ぎにわたしの家にやってきて、そのあとふたりでまちに繰り出した。ゴールデンウィークは祖母の家で会い、先週はわたしが両親の家(というか実家)に行き、そして今日もこんな感じ。「来週はミスチルのライブで東京に行くから札幌にいない」と告げると、母はなんだかつまらなそうな顔をしていた。

気温は13℃。横浜なら2月下旬から3月上旬くらいの気温だと思うと、厚手のコートではなくスプリングコートをはためかせて歩く自分が信じられない。それでも、この色鮮やかなまちにはやっぱり薄いコートが似合う。
札幌の春はまさに百花繚乱。ライラックの甘い香りを心ゆくまで堪能したい。