sunshine yellow

明日、とても久しぶりに“すきだったひと”に会う。

別にデートでもなんでもなく、もちろん二人きりで会うわけでもなく、メインは彼に会うことよりもミスチルの25周年LIVEに行くことなんだけど、服をどうしようかなとか、靴を、カバンをどうしようかなとか、そんなことばかり考えてる。
ハンドのネイルは思いっきり派手にした。ショッキングピンクとパンプキンイエローのブロックネイルをいくつかアクセントにして、残りの指先はピンクとイエローの単色シロップネイルをランダムに配色。フットネイルも色を合わせた。まるでドラゴンフルーツとマンゴーを思わせるような、夏らしいカラーだ。
わたしが彼をすきだったのは、もうすっかり過去の話。あのころは、たとえ休日でも、彼に会う日にこんなド派手なネイルはぜったいにしなかった。もっと背伸びして、かわいいよりもきれいと言われるような大人っぽい女性でいたかったから。今思えばちゃんちゃらおかしい話だけれど、あのころのわたしは、彼を想うことにただまっすぐで、とても一生懸命だった。

カメラマンの彼のことも、いつか、そんなふうにすきになれたらいいと思う。
つないだ手のやわらかさとあたたかさを、わたしはこの一週間ずっと反芻するように思い出していた。世間では、某国会議員や昔のアイドル女優が「恋人つなぎ」を撮られて大騒ぎ。なんだか嫌な感じだけどわたしにとってはわりとタイムリーな話で、彼がわたしと指を絡めて手をつないでくれた理由はなんだろう?と考えてみるものの、やっぱりよくわからない。
しばらく続いていたLINEはぱったりと返事が来なくなって、さみしいと思う反面、まぁ、またそのうち思い出したように連絡が来るだろうし、わたしから連絡をすることもあるんだろう…と考え直したら気が楽になった。あれから彼はどうしているかな。何を思っているだろう。彼の「またね」は、どんなに時間がかかってもこれまで一度も嘘をつかなかったから、もう一度だけ信じてみたいと思う。

それでは皆さま、よい夏休みを。わたしはまもなく北海道に旅立ちます。

red

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今にも雨が降り出しそうな蒸し暑い土曜日の午後。3ヵ月ぶりに彼に会った。
彼は少しも変わっていなかった。ちゃらんぽらんで、優柔不断で、ちょっとエッチで、食べものの好き嫌いも相変わらずで。でも、わたしといっしょにいる間は一度もたばこを吸わないところや、ひとにやさしすぎるところは、最後に会ったあの日のままだった。
彼の買い物に付き合って、デパートやショッピングセンターをひやかして、本屋さんをぶらぶらした。出版社のカメラマンなだけあって、彼はいろいろな本を知っているし、写真にまつわるエトセトラの話もとても興味深いものばかり。カフェに入って一息ついて、夕食にはおいしいカレーを食べた。
外は強い雨が降っていた。

「腹ごなしに少し歩こうか」と彼が言うから、閉店間際のデパートをのんびり歩いた。少しずつ彼との距離が近くなる。パティオのソファに腰を下ろして、なんてことない話をした。彼の体温が薄着の袖をとおして伝わってくるからどきどきして、わたしは少しの沈黙が怖かった。
デパートを出ると雨が上がっていた。「もう少し歩いて帰ろう」と、彼は駅と反対側に歩き出した。お昼間に同じ場所で作られていた氷のオブジェが、ほのかな明かりに照らされてきらきらと光る。きれいだなぁ…と見とれていたら、ふと、彼がわたしの手を取った。中途半端な恋人つなぎ。わたしはされるがままだった。彼と、久しぶりに手をつないで歩いた。デートの終わりの別れ際に手をつなぐなんて、彼はほんとうにずるいひとだ。
「もうすこし一緒にいたい」と言えたらよかった。でも、「うちにおいでよ」という彼のお誘いを丁寧に断った手前、そんなこと、口が裂けても言えなかった。

「また会おう」の約束が叶うのはいつになるだろう。そんなことを考えながら、わたしは右手にやわらかく残る感触を確かめている。やさしいのか、本気なのか、遊ばれているだけなのか、彼がわたしのことをどう思っているのか、結局何ひとつわからなかった。

やっと会えたね——3ヵ月越しの「会いたい」が叶った瞬間。
わたし、ほんとうは、彼にそれを伝えたかった。

aliceblue

だいすきだったあのひとも、16歳年上だった。彼の年齢なんて見て見ぬふりだった。大人の彼に憧れていたし、仕事ができる彼を尊敬もしていた。あのころのわたしは、ほんとうにほんとうに、心の底から彼のことをだいすきだったから、きっと年の差なんてどうでもよかった。
でも、それは、一生叶わない恋だと、未来のない恋だと、知っていたからだ。

例のカメラマンの彼は、わたしのすきだったひとと同い年。「会いたい」「会いましょう」という言葉を交わすだけでいまだ会うことは叶わないけど、ときどき送り合うLINEからは「もしかして?」と思わざるを得ないような甘美なニュアンスが伝わってくる。
わたしはどちらかというと恋愛下手だし、昔の恋人の数は片手で十分足りるし、なによりいつも片想いばかりだけど、そんなわたしでもさすがにいろいろと考えを巡らせるほどに、彼は気持ちをストレートに表現してくる。次に会うことになったら、本気なのか遊びなのか身体目的なのかは置いといて、彼は真面目に「すき」とか「付き合おう」とか、そういうことを伝えようとするんじゃないかと思ってしまう。

彼のことは嫌いじゃないよ。触れたり、触れられたり、そういうのがイヤだと感じることもない。でも、彼を好きか?と聞かれたら答えに窮する。女好きそうだし、ちゃらんぽらんだし、一日数本だけどたばこも吸うし、優柔不断だし、雨男だし、嫌いな食べ物も多いし。こうして並べて書くととんでもないヤツだと思うけど、でも、やさしさと人柄のよさは全身からにじみ出ている。
わたし自身、今のところ「早く結婚したい」とか「婚活しなきゃ」とか、そういうことを強く思っていないから、こういうフラフラしたひとのところになびいてしまうのかな。一生ひとりで生きていくことに抵抗もないし、そのための仕事もきちんとあるけど、ふと感じる寂しさを埋めるための誰かがいてくれたらな…って、なんていうか、そんな気持ちなのかな。(そうだとしたら、彼にはとっても失礼だ。)

口約束を重ねれば重ねるほど、しゃぼん玉みたいにぱちぱち消えて、途端になかったことになってしまう。先日の三連休は、彼からお誘いがあったけどわたしの都合がつかなかった。土曜日は、「誘おうと思ってたのに仕事が入っちゃった」と連絡をもらった。
こうも続くと「会いたい」は募る一方で、そこに恋愛感情があってもなくても、彼に一目会いたい——それも、間違いなくわたしの本音。

思い返せば、彼に会ったのは4月が最後だった。
そろそろ会わないと顔も忘れてしまうよ…なんてね。